東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023

知人が東京ビエンナーレに関わっているということで、見所をバスで回るガイドツアーを組んでもらった。会社のアート好きに声をかけ、皆で楽しくアート鑑賞。天候にも恵まれて素敵な体験となった。しかし、もっと早く実施すれば良かった。会期中にまた訪れたいなと思うものもたくさん。

 

集合場所の寛永寺の根本中堂まで鶯谷駅から歩く。普段は、国立博物館側の方はよく行くが、こちらを歩くのは久しぶり。かつては、上野公園、国立博物館上野動物園不忍池のエリアまで寛永寺の敷地だったが、現在は敷地も建物も創建時から比べるとこじんまり。それでも徳川の菩提寺として、威風堂々とした意匠はそこかしこに、今も残っている。

 

ガイドツアーは、寛永寺からスタート。

 

東京のための処方|マイリン・レ:サイファー II

寛永寺の清水観音堂で撮影されたダンスセッション「サイファー II」の映像を同じ寛永寺の中心的施設である根本中堂内で鑑賞。和の歴史的空間にモダンなダンス・パフォーマンスが不思議とマッチする。


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同じ寛永寺だけれどもお堂どうしの距離は、結構離れているので、モニターから眺める景色は別のところのようでもあり、窓ガラス越に観ているようでもあり不思議。

 

東京のための処方|ノア・ラティフ・ランプ:Forever Now

根本中堂の裏手に設置された大きな砂時計。仏教の壮大な世界観を語る「恒河沙(ガンジス河の砂)」を用いた作品だ。

 

鈴木理策:Mirror Portrait 一隅を照らす

普段は公開されていない渋沢家霊堂前庭に入れるだけでも感激。展示されている作品は、鏡の向こう側に入ることがができ、後から知らずにやってきた人の仕草や表情をマジックミラー越しに見ることができる。鏡に向かい、自らを見つめながら、自分にとって大切な存在を想いつつ、 ここにいない相手や遠い場所など、時空を超えたつながり(リンケージ)が意識される。

 

日比野克彦ALL TOGETHER NOW

日比野克彦さんと言えば、段ボールを使ったアート作品だ。しかし、あれ、なんかちょっとゴミっぽいと失礼なことを一瞬思ってしまった。こちら、ビエンナーレの会期当初は、綺麗に組み立てられた作品だった。それが雨の日や風の日、そしてまた晴れの日と、時間と天候に身を委ねながら変化してきたものだった。なんとも変容していく段ボールに人生を感じてしまう。

とても素敵なお庭だった。

 

西村雄輔:ECHO works - 回向柱

回向柱は、長野・善光寺の前立本尊御開帳の際に本堂の正面に立てられる角塔婆で、これに触れると前立本尊とつながり、ご利益があるとされる。回向柱を通して、実際には直接はさわれない、さわれなさそうなものとつながり、ここから離れたものや時間、存在へ意識を広げるというもの。会社の仲間とそれぞれ紐を掴んで周りを回った。中心の筒には、周辺の土が入れられている。

寛永寺境内に造営された5代将軍・徳川綱吉の霊廟の門「常憲院霊廟勅額門」。

 

ここからバスに乗り宝石の町・御徒町へ移動。

 

ジュエリーと街 ラーニング

あまりゆっくりと散策したことはないけれど、電車から見える御徒町駅の風景は、ジュエリー店、卸売店の看板だらけ。宝石は、高いからお店に入るのも躊躇しちゃうよねえ。展示は、御徒町にもほど近いノーガホテル 上野。

一般公募で集まったメンバーたちと、御徒町から外神田の街並みに専門店、職人さんを訪ね、貴金属や宝石の多様性を知り、家で眠っている古い装身具をコンテンポラリー・アクセサリーにつくりかえるというプロジェクト。その制作物が展示されていた。プロジェクトのチューターでジュエリー・デザイナーの一力昭圭さんが会場にいらっしゃり、お話を聞かせてくれた。


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再び、バスで移動し、御徒町駅秋葉原駅の間の高架下スペースへ。

 

中村政人:ネオメタボリズム/ガラス

テーマは、「建築の解体プロセスを設計時になぜ考える事ができないのか?」。組み立てる設計は丁寧にするが、解体時は石膏ボード、コンクリート塊、木くず、ガラス等がごちゃ混ぜに分別されないままミンチ解体され、その一部が不法投棄、野焼き等により不適正に処理されているそうだ。まずは「ガラス」にフォーカスを当て、そのサーキュラーエコノミー(原料→生産→消費→リサイクルのプロセス)に新たなアクションを起こしたいというのが作者のメッセージ。

電車の高架下のスペースに無数に流れているガラスは、涙のように見える。

 

東京ドームシティアートプロジェクト|遠藤麻衣:アトラクティヴリーアイドリング

再びバスで移動し、次に訪れたのは東京ドームシティ。エントラスの回廊に巨大な写真群。どれも広告のようにかっこいい。被写体となっているのは、著名なアスリートやアーティストではなくて、東京ドームを裏で支えている人たち。働いている姿やちょっとした休憩時間のかっこよく表現されているのがとっても素敵だ。

 

パブローブ 100年分の服

パブローブとは「パブリック」と「ワードローブ」を組み合わせた造語で、 服の図書館のような、誰もが利用できる公共のワードローブを作り出すプロジェクト。関東大震災後の復興期に建てられた神田の看板建築・海老原商店がその舞台。かつては、仕立て屋さんだったそうだ。

震災から現在まで100年の間に着られた服を公募、集められた服がたくさん並んでいる。集められた服には、それぞれ誰がどう着ていたかが書かれている。服を通して、100年の人の歴史を振り返る。そして、展示されている服は、自由に着ることができる。今日は、最終日前日だったのでできなかったが、1週間レンタルすることも可能だったそうだ。昔の服を着て、知らない誰かの思い出とともに、現代の街を歩くことで、知らない誰かと繋がれるような気がする。

僕も戦前の国民服を着せていただいた。

 

中村政人:私たちは、顔のYシャツ

再びバスで移動して学生の頃から見覚えのある印象的な看板の建築へ。以前からずっとインパクトがある看板だなあと思っていて、洋品店としてずっと営業されていたが、2020年に閉店、そしてついて建物が解体されることになった。その建物をフルに利用しての展示となる。まさに建物の終活プロジェクトだ。

大正時代に創業したオーダーシャツの店で、こちらの顔は、創業者の青年時代の似顔絵とのこと。建物の中は、この顔だらけ。

館内に投球マシンがあり、黄色いボールがあちこちに散らばっている。

看板の顔に似ているのは誰?コンテストが開催されていた。どなたが優勝されたのかな?

 

顔がデザインされた商品もたくさん販売されていた。顔ラベルのクラフトビールを買って飲んだ。

 

東京のための処方|シャーロット・デ・コック:HYPERNOVA

こちらは車窓から見学。ただ、前日、気づかずにこの下を歩いてた。閉じこもっている箱からの解放がテーマ。溢れる突破感があるね。

 

スローアートコレクティブ:Slow Art Collective Tokyo

持続可能性や多文化共生をテーマに、竹やロープなどの自然素材、街で拾い集めた素材を用いた市民参加型のアートプロジェクト。

来場者が作品に紐を結んでいき、作品は毎日形を変えていく。

 

Not Lost Tokyo

瓶をかつてその建物があった地図の場所に置き、ARで表示させるとそこにあった建物が現れる。まるで採取された標本のように。

 

エトワール海渡リビング館

すっかり日も暮れ、到着したのは、馬喰町のエトワール海渡リビング館。この辺り、繊維問屋街で、なかでもエトワールさんは周辺にビルがたくさん。今回、そのビルを一つ借り切っての美術展示。エレベーターで移動しながら、各フロアの展示作品を巡る。

 

バスをチャーターしてもらったので駆け足だったけど、効率よく周って鑑賞できた。次回のビエンナーレは、会期早めに行かなくては。そして、何か企画や展示で参加できたらいいなあ。

 

tokyobiennale.jp