黒澤明のデビュー作「姿三四郎」を観に京橋の国立映画アーカイブへ。今回の東宝映画の特集、大ホールではなく小ホールだったのでちょっとスクリーンが小さめ。それでもスクリーンで観られるのは嬉しい。
黒澤の「姿三四郎」は、銀座並木座やここ国立映画アーカイブなど、黒澤特集をやる際に、何度も観てきた。ビデオをも持っていたので、自宅でも何度も観ている。黒澤作品では一番観ているかも。
冒頭の闇討ちの場面から投げ捨てられた下駄で時間の経過を表現し、そこから物語の現代へとパーンするカメラ、三四郎は怖いぞと歌いながら走る子供達が風のように登場人物の流れを誘うカメラワーク、柔道の試合をストップモーションでまるで一幅の絵画のように表現する構図など、デビュー作にして黒澤の才能の片鱗が散りばめられている。
主人公三四郎のさまざまな葛藤、とりまく人物の内なる心情も見事に描かれていて、ドラマとしても見応えがある。 圧巻は、ラストの箱根・仙石原のススキ草原で撮影された決闘のシーン。風や雲、ススキにさえも演技をさせたような圧倒的な映像美は、何度観てもゾクゾクする。モノクロ映像なのに鮮烈なカラー映像のように脳に焼き付いている。