フランツ・カフカ 「変身」

昨夜、何気なく手にとって一気に読んでしまった。

初めて読んだのは高校生の時。ある朝突然巨大な虫になってしまう主人公の不条理と過酷な運命に重く暗い印象があったのだけど、改めて読み直してみると、虫になってしまった主人公とそれに対峙する人々の姿は滑稽に描かれていて、カフカ本人がこの作品を友人に読み聞かせる時、笑いながら行なったという逸話も頷けてきた。

おぞましい虫になってしまった主人公を最初は恐れ、そして憐れみ、やがて疎ましくなり、いなくなると晴れ晴れとする周りの人間の在り方は、不条理どころかまさに人間の本質のような気がしてしまった。身勝手で残酷な人間の振る舞いはとても滑稽で、人生は喜劇なんだと思ってしまう。