第283回 やすらぎ寄席

今日は、虎ノ門で仕事があったので、家からてくてく歩いて出かけた。途中、虎ノ門ヒルズ手前の別院真福寺前を通る。そう言えば、前職での六本木時代に帰りによくここで開かれていた落語会に来たなあとふとお寺の案内板を見ると「やすらぎ寄席」のお知らせがあった。なんと今日じゃん、これ運命じゃんってことで、仕事が終わった後帰宅せずに久しぶりに落語鑑賞。お久しぶりに談幸師匠の高座を拝見できて幸せな気分!!!

 

生ぼう 「たらちね」

客よりも大笑いする住職の声が堂内に響く、この懐かしさよ。283回を数えるこの落語会で、落語もたくさん聴いているはずの住職が「たらちね」で大爆笑ってどういうこと?(笑)

 

雲水 「どうらんの幸助」

初めて聴く落語。雲水師匠は、関西弁で落語をするので上方落語を聴けるので貴重。途中で主要人物が入れ替わるパターンのネタ。親分肌だけど趣味もなく義太夫を知らない幸助の人物描写が楽しい。ああ、自分も義太夫の知識がもっとあればもっと楽しいのになあとこの手のネタを聴くたび思うなあ。 ものすごく久しぶりの雲水師匠、ものすごく毛が生えてた。ハゲていたのではなくスキンヘッドだったのね。

 

談幸 「能狂言

今、このネタを演る人ってどれくらいいるんだろう。談幸師匠の「愛づらか百選」かと思った。 地方どさ回りの売れない噺家、太鼓や笛の鳴り物を口でやらされる下級武士、慇懃無礼な茶屋の婆さんなど、すっとぼけた登場人物が多数現れ、そこはかとない可笑しさがジワジワと伝わり、楽しい気分になる。いきいきとした人物描写は、そこにその人がいるかのよう。 狂言を模した驚きのサゲは、圓生師匠が最初にやったみたいだけど、ある意味アヴァンギャルド古典落語でこの終わり方はないよねえ?初めて見るお客さんは、もしかしたら戻ってきてサゲを言うのではと拍手するの待っちゃいそう。(笑)

 

ぜん馬 「富久」

「鼠穴」しかり、年の瀬の火事を扱った落語には名作が多い。この噺もそうで、大好きな噺だ。頂点とどん底を数日の間に体験する人間の悲喜に人生が凝縮された珠玉の噺だと思う。「富久」をいろんな噺家さんで聴きたいんだよねえ。こちらも久しぶりにぜん馬師匠の噺が聴けてよかった。

 

談幸師匠が芸協に移られてから、このやすらぎ寄席から談幸師匠が抜けちゃうのかなと思っていたけど、その後も「立川流の会」から「談志一門会」に名称変更して、引き続き談幸師匠が立川流の師匠方と一緒に出演しているの素敵じゃない? コロナ禍や両親の立て続けの入院などあり、僕自身、落語が本当に久しぶりだったけど、やっぱり落語は素晴らしい。あまりにご無沙汰してしまったので、終演後、楽屋の談幸師匠に挨拶に伺う。

かつて立川流の良心といわれた談幸師匠、もはや人類の良心と言っても過言でないほど素敵な紳士!憧れるなあ。しかし、高座のまくらでの毒舌は、落語界一だと思うんだよねえ、そのギャップに萌えちゃう。(笑)

 

chisan.or.jp