霊魂の不滅

Amazon Primeで100年前のスウェーデン映画を観た。日本語字幕がおぞましいくらい支離滅裂でひどいのだが、映像と後から付けた音楽がすごいので観入ってしまった。

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サイレント映画って、台詞が無い分、役者の目や表情、仕草の迫力がすごいね。モノクロの陰影と相まって独特の雰囲気。 1920年の作品だけど、映像表現ってもうこの頃にやり尽くされたんじゃないかと思うほどすごい。死んだ人間から魂が抜け出す場面、死神の使いが馬車に乗ってやってくる場面、現在と過去が交差するフラッシュバックなど、その後の映画に模倣される映像表現に溢れている。

極め付けは、キューブリックの「シャイニング」のクライマックスのシーンもこの映画から取ってきたものだったとびっくり。 物語は、家族や兄弟、知人を不幸のどん底に落としいれたアル中男が死んで、自分の過去を死神の使いと旅する間に後悔から改心していく様を描くという、ちょっと「クリスマス・キャロル」っぽい。

監督・脚本・主演は、ヴィクトル・シェストレム。ベルイマンの映画「野いちご」で老教授を演じた人だ。ベルイマン曰く「この映画が、本当の意味で最初に衝撃を受けた映像体験」だったとのこと。 100年前の映像表現が色褪せてないばかりか、今もってものすごい迫力で圧倒された。 邦題が「霊魂の不滅」というあんまり食指が動かないタイトルなんだけど、原題のスウェーデン語はKörkarlen、「御者」という意味らしい。小説の邦題は、「幻の馬車」。大晦日に死ぬと、翌年、死神の使いとなり馬車に乗って、死んだ人の魂を集めに行かねばならないということからきているタイトル。