驟雨 <国立映画アーカイブ>

国立映画アーカイブ成瀬巳喜男監督、原節子主演の「驟雨」を観てきた。この映画は、映画館でかかる度に観ているな。ほとんどがここだけど。

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成瀬巳喜男と言えば、大作「浮雲」が有名だけど、「浮雲」は生きていくのが嫌になるほどズシンとくるよねえ。 同じ監督・脚本家が作ったとは思えないこの「驟雨」は、とっても大好きな作品。倦怠期を迎えた夫婦の何気ない日常を描いているんだけど、ユーモアとペーソスに溢れ、不思議とぐいぐいと引き込まれる。 男と女に関する社会的通念は、この時代のもので現在とはかなり違うけど、根本には人間の普遍性がよく描かれている。登場人物の行動や言動に、人間ってそうだよねえ。ああ、そうなりたくないのに、そうなってしまうよねえとしみじみしてしまう。 岸田國士の様々な作品を一つの物語にまとめた水木洋子の脚本は秀逸で、自分のことしか考えない人間の可笑しさに笑いながらも、それってあなたのことでしょうと観客に迫ってくるようだ。 「浮雲」とは違って、笑いながらもちょっと切なくなって、最後に幸せな気分になれる素敵な愛すべき映画だ。これからも何度も観たい。 ラストの紙風船の場面は、本当に素晴らしい。 助演の小林桂樹もとってもいい味だしている。

 

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